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  No.10  2002.6

●主な内容

  1. “アルプ”への旅(寄稿・右田久美子)
  2. アルプの風 −歳月が過ぎて−(山崎猛)
  3. 10年間のあしあと(0992.6〜2002.6)
  4. 10周年記念事業
  5. 『アルプの夕べ』《講演会》
  6. アルプ関係図書案内
  7. ご寄贈ありがとうございました
  8. お詫び
  9. 入館者の記録・編集後記

“アルプ”への旅

 大好きな北海道に、敬愛する串田孫一さんと“アルプ”の美術館がつくられていることを昨年知り、今回10日あまりの道内の旅の一番の目的として訪れさせていただきました。
 想像していた以上に“アルプ”らしさのあふれる小さな美術館に時の経つのも忘れ、次の目的地などもうどうでもいいような気分になってしまいました。
 斜里の駅から何人かの方に道を敢えていただきながら、ようやくたどり着いたら白樺の林、目の前には斜里岳、期待どうりそれ以上の停まいにドキドキしてしまいました。
 私と“アルプ”の出会いは、19歳の時に叔父にもらった串田孫一さんの“山をめぐって”という、小さなきれいな麻布の装丁の本でした。
 串田孫−さんの本の中に登場する“アルプス”や上高地へのあこがれ、霧が峰のヒュッテ・ジャベルやコロボックルヒュッテ、ヒュッテ・クヌルプなどへのひとり旅が“私のアルプへの第一歩”でした。
 そのうちにアルプスの山並みを遠く眺めているだけではもの足りなくなり、北穂高岳、白馬岳、常念岳などにも登るようになりました。
 ヒュッテ・ジャベルのご主人から薦められた尾崎喜八さんや、浦松佐英太郎さんなどの本から畦地梅太郎さんや辻まことさん、板垣勝宣さん、松方三郎さんを知り、松方三郎さんを知ることで柳宗悦さんを知り、民芸の世界を知ることもできました。
 先年も、宮澤賢治がまだ人にあまり知られなかった時代に、串田孫一さんが神田の盲本屋のご主人と一緒に「春と修羅」を刊行されたことを花巻の記念館で買った本の中に知り、ここにも串田さんが、とびっくりしてしまいました。
 こちらも私の敬愛する神谷美恵子さんの著作集の中にも串田孫一さんが登場され、私の40数年の人生でひかれたものや、人々のなかにいつも串田孫一さんがいらっしゃり、その知識や交友の幅の広さには驚いてしまいました。
 考えますと、私の20代を串田孫一さんとの出会いが次々に扉を開いていただいたように感じます。
 私も、はや中年まっただなかとなり、しばらく離れていた上高地の奥の道、徳沢や潤沢への一人での“アルプ的山歩き”をまた再開したくなりました。
 昨年、時代の波が私にもふりかかり、会社の早期退職の募集で退職したのですが、その失意の時に串田孫一さんの「日記」という本をじっくりと読む時間があり、戦時中に東北の荒小屋という土地に疎開され、東京の蔵書を戦火で焼かれ、戦後の生活の建て直しに苦労された日々のあったことを知り、串田孫一さんでさえこんなに苦労された時代がおありになり、そして今の穏やかな80代をむかえていらっしゃることを想い、大きな励ましをいただきました。
 私も幸運にも、10月1日から再就職することになったのですが、長い休みはもういつ取れるかわからないと、9月14日夜神戸をたって、2週間ほどの北海道の旅の途中です。
 16日には旭岳裾合平の紅葉のなかを歩き、苦しかった失業中の一年間を振り返りながら、今北海道をこうして旅している自分を想うと感謝の念がわいてきます。
 途中霧にまかれて寒い思いもしましたが、風にゆれるチングルマやはっとするようなあおいリンドウの群落など、山でなければ見ることのできない風景に“山”を知っていて本当によかったと思いました。
 著書を通して山への対し方というようなものを教えていただいた串田孫一さんに感謝せずにはいられません。
 そしてなにより、このような美術館をつくられた山崎さんという方がいらっしゃるということを本日知り、私も“アルプ”の世界を知ることができたのですから、“アルプ”に出会ったあの頃の“こころ”をたいせつにしていかなければと、館内で過ごさせていただきながら思ったことです。     ′
 美術館の方がとても親切で、そして無料で拝見させていただけるということも、私には驚きでした。友人たちに美術館の存在を話したいと思いながら、またあまり人には知られたくない、私の“隠れ家”のような存在として、遠い神戸から時々思いうかべていきたいとも‥…。
 また北海道に来る楽しみがひとつ加わりました。
 一人旅も約一週間、今日はとても心があったかくなりました。
美術館の親切でやさしい女性の方、コーヒーをご馳走さまでした。
 私がここにいる間、だあーれもいらっしゃいません。
私はひとりでゆっくりこうして書きものをして過ごさせていただいていますが、経営の方をちょっぴり、心配したりしています。(アルプ的ではないですね。)
 ありがとうございました。

石田 久美子(神戸市在住)

アルプの風 一歳月が過ぎて−

−10周年記念のアルプ−

−1968年2月号−
 ようこそ新緑の知床へ、開館式典に集って戴いてから10回の四季が巡り来て去りました。この歳月は、登攀にも似たものでした。rアルプの林』の木々たちも大きく成長した。幹も太くなり、新緑の歓声をあげながら、深緑へと輝いている。木々たちは多くを語らないが「アルプ」の存在と理想を、微かながら正確に響かせている。
  1968年2月号は「アルプ」lO周年記念号で特集「朝」を見ながら遥か彼方の、山頂を染める薔薇色の荘厳さに陶酔しながら目覚めている。
  34年も前の「アルプ」ではあるが、今の私に何を言いたいのか、何を聞かせたいのかを、10年を振り返りながら、明日への「道しるべ」を暗示してくれているようでもある。
  「編集後記」 に下記のような、串田孫一氏の文章がある。

  − 途中休刊もなく、合併号を出すようなこともなく、歩調の乱れというほどのこともなく十年歩いて来た。
  山頂に立つという大袈裟な気持はないにしても、うしろを振りかえっては見たくなる。−

 この言葉そのものが、今の私の心境である。ここまで迷わずに登ってこられたことに、心から感謝とお礼を述べたい。

−T.Yamazaki−

10年のあしあと  1992.6〜2002.6

1992.6.13 開館 ようこそ新緑の知床へ
 93. 1.15 釧路沖地震
 93. 2.10 今井雄二・喜美子展
 94. 2. 5 串田孫一限定本と書簡展
 94. 4.13 長野県から小さな古いピアノ到着
 94. 6.18 入館者5,000人達成
 94. 7.10 特別展示 限定版 「山のABC展」
 94.10. 4 「北海道東方沖地震」被害により30日間閉館
 95. 9. 6 「アルプ」 銅版画展(挿入画)
 96. 3.30 入館者10,000人を記録
 96. 5. 1 書票展−小さなの宝石−
 96. 8.14 尾崎喜八展(限定本・花咲ける孤独)他
 96. 9.17 創文社より「アルプ」バックナンバー寄贈
 97. 1.23 知床半島に流氷接岸
 97. 4.16 一原有徳展 アルプと北海道の山
 97. 6.18 西常雄・彫刻常設展示室を設置
 97. 7.12 5周年記念 「アルプの夕べ」フルートとハープによるコンサート
 97.10. 1 畦地梅太郎「山の版画展」〜山男シリーズ〜
 98. 1.25 斜里海岸に流氷接岸
 98. 2.21 最低気温−24.5℃を記録
 98. 3.25 オホーツク海明け宣言(斜里海岸)
 98. 4. 7 入館者14,000人を突破
 98. 7. 3 「アルプの夕べ」フルートとハープによるコンサート
 98. 9.21 斜里で最も遅い真夏日を記録(網走で31.6度)
 98.10.21 入館者15,000人に
 99. 4.12 斜里海岸にて蜃気楼が見られた。(13:40頃)
 99. 4.16 オホーツク海明け
 99. 5. 5 入館者16,000人に
 99. 7.21 「アルプの夕べ」フルートとハープの演奏会
 99.10. 9 知床連山・斜里岳に初冠雪
2OOO. 1.18 流氷初日
 00. 4. 7 入館者17,000人に
 00.10.10 山崎猛写真集『日本の灯台』刊行
 00.10.22 記念樹「銀杏」散る
 01. 1. 8 流氷接岸
 01. 4.22 入館者18,000人を突破
 01. 6. 2 ライラックが咲き始める
 01. 9.21 斜里岳初冠雪
 01. 9.30 山崎猛写真集『樹の歳時記』発行
 01.10. 1 『山のABC』『山で一泊』幻の名著 復刻
 01.12.27 流氷確認、1945年観測開始以来、最速タイ
 02. 2. 2 入館者20,000人目の方に記念品を
 02. 4. 8 流氷終日(海明け)
 02. 5.11 「lO周年記念講演会」アルプの夕べ 武田 厚
 02. 5.12     〃      〃     田中 良


■『10周年記念事業』

『子供の情景・響き』ブロンズ・鈴木吾郎 作
子供たちの心に『アルプ』の精神が育むことを願う。

※10年間のアルプ基金で設置させていただきました。
ありがとうございます

■『アルプの夕べ』《講演会》

 ところ・山荘 風水樹(中斜里)

2002年5月11日 PM6:30
『美術館と私たち』〜かけがえない文化の宝庫〜
     武田 厚(美術評論家)

2002年5月12日 PM6:30
『魂の源流』〜北辺の大地に魅せられて50年」
     田中 良(画家・二科会評議員)

■アルプ関係図書案内

『北八ツ彷徨』山口耀久著・平凡社刊
溢れる詩情、生き生きとしたリズムと躍動感。
詩人の心をもって八ヶ岳を彷捏い歩き、うるわしき文学の世界を築き上げた殊玉の随想集。

『八ヶ岳挽歌』山口輝久著・平凡社刊
「八ヶ岳は私にとって、なによりもまず『美しい山』であった」と語る著者の八ヶ岳との別れ。
名品『北八ツ彷捏』以後に綴られた待望の随想集。

『鳥と語る夢』串田孫一著・筑摩書房刊
〜豊かな好奇心の輝き〜老いを隠すのでも誇示するのでもなく、ただ淡々と自然に受け入れて生きるエッセイストが虚心に対象と向き合い、自由な心で日常を静かに思索する随想集。

☆『アルプ』が残した山の本(幻の名書)が今、どんどん復刻されている。荘厳な山頂の夜明けの如く・・・『山のABC』『山で一泊』『山の目玉』『わが山旅五十念』『アルプス記』『尾瀬と鬼怒沼』『スウィス日記』『北海道の旅』etc‥‥

■ご寄贈ありがとうございました(順不同・敬称略)

部正恒/川添英一/田中良/加藤建亜/山室真二/手塚宗求/津田清子/山口耀久/田中清光/小川隆史/若林修二/小田島護/綿貫隆夫/田村宏/熊谷榧/小笠原輝昭/畦地康恵/横森政明/佐谷和彦/山田和弘/渋谷義明/曽宮夕見/村田良介/山崎達/大谷一良/垣内光子/平野安雄/串田孫一/森田秀子/内藤憲一/鈴木星江/永井正/小野木三郎/一原有徳/有田忠郎/伊藤純夫/中村明弘/小松明/小林満/大高慶子/菅原達也/里見正/尾崎喜八研究会/大阪芸術大学文芸学科合同研究室/(株)創文社/(株)アイワード/(社)斜里青年会議所/北網圏北見文化センター/北方民族博物館/知床博物館

・全国の博物館、美術館から資料や印刷物等をお送りいただきました。ありがとうございました。

※石田さんの寄稿文は「感想文集」から原文のまま掲載させていただきました。

■お詫び

 開館10周年記念特別として企画しました『曽宮一念展』は遅れまして申し訳ございません。只今、準備作業中で、遅れたぶんだけ展示内容が充実いたしますので、ご期待下さい。(9月下旬予定)
 『北のアルプ美術館ホームページ』につきましては現在の処、見通しがつきません事をお詫びいたします

入館者の記録・編集後記

編集後記◆今年の桜の開花も、この近年で最も早かった。沖縄から90日かけて北上してきた桜は、アルプの林に4月30日に辿り着いた。流氷の接岸も記録的に早く、巡りくる季節のテンポが速くなっているようです。開館10周年を迎えた白樺の新緑は、思い出を語っておられます。ひとり一人の代弁者として‥
過ぎ去った歳月を振り返ると、何か大切な物を置き忘れているのでないかと思われてなりません。それは、我が人生で、尾崎喜八、辻まこと、曽宮一念この三人に逢うことが出来なかった事かも知れない。新緑め朝も、枯れ葉が舞う日の午後も、あの吹雪の後にも、訪れてくれた方々からの言葉に勇気づれられました。今日は、爽やかな緑の風に誘われて聞こえてくるアルプの調べを‥
                    〜忙種の頃〜(T)

  No.10 2002年6月発行(年1回)
  編 集:山崎 猛/小笠原忍/中村恭子 カット:中村朋弘
      山本夏代           発 行:北のアルプ美術館
  〒099−4114 北海道斜里郡斜里町朝日町11−2
  TEL O1522−3−4000/FAX3−4007

 

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